代表メッセージ

株式会社 丸や岡田商店
代表取締役社長 諸貫雄治

埼玉県出身。2008年新潟大学農学部卒業後、東京築地の水産荷受会社に就職。2年のカナダ出向を経て、2016年(株)丸や岡田商店入社。2023年四代目として代表取締役社長に就任。

北海道の食文化を守る、その責任を胸に。

創業100年を超えて

初代下窓石太郎が海産問屋を創業して1世紀が過ぎました。「岡田商店」となった1983年以降、保存や加工のさまざまな技術革新により、現在のメイン商材である数の子と身欠ニシンの安定的な製造が実現しました。この間、ニシンの不漁という長い苦難の時代がありましたが、2020年頃からようやく漁獲量が回復、前浜産のニシンを使えるようになってきました。

私が四代目社長を継いだのは、2023年7月。歴史ある岡田商店にあって、その役割は重いものがあります。北海道漁業のすべてを知っていると言っていい先代(現会長)の視点を大事にしながら、製造全体と営業に全力を注いでいるところです。「伝統を守りつつ働いている人を守る」姿勢で、頼りすぎず、知恵は貸してもらい、提案があればしっかり話し合う、あとは自分がやりたいようにやってバランスを保っています。

弊社の強みは、大量生産が難しい高級水産加工品ゆえにお客様の要望に対し小回りが利く点。1ケース(20箱)から受注できるのは、細かい注文を積み上げまとめて出荷するなど独自の工夫によるものです。繁忙期が決まっている数の子や身欠ニシンなどは、計画的に生産して鮮度を維持。漁の状況や市場を見据えて、お客様とのコミュニケーションを密にし、早めに注文への声かけをするなど確実に要望に応える努力をしています。

この時代だからこそ、の難しさも。

弊社製品の質の高さは、ものを見てくれればわかりますが、それだけで勝負していくには難しい時代です。たとえば身欠ニシンは、つくる会社が少なくなって購買量も減っている。つくった分は売れるけど、嗜好品に近いもの、言い換えればなくても困らないものになりつつあるという意味で危機感を持っています。私たちがつくらなくなれば、ほどなく消えてしまうでしょう。しかしそれは日本の、そして北海道の食文化を絶やすことに等しい。それを止めたいという使命感が、儲けが少なくてもやり続ける理由のひとつです。営業面でも、いろいろなところに少しずつでも売り続けてもらえるよう強く意識しています。

また、近年では労働者保護の観点から運送業界にも大きな変化が起きています。毎日いつでもトラックが動く時代ではないため、納期を合わせるのが難しい。荷物を期日に届けることが信用獲得の必須条件ですから、どうしても無理な場合は断る勇気も必要になってきますね。

ニシンの乾燥は、時間をかけて水分を抜くには冷風、表面の水分を早く抜くには温風と、使い分けながらソフトタイプと本乾タイプをつくる。

品質と味のために、人の手と感覚を生かす。

弊社は自社製品と相手先ブランド製品との二本立てで製造しているため、商品の種類が非常に多い。今でも「こういうのつくれませんか」といった相談が多く来るのも、これまで岡田がそうした要望にこまやかに応えてきた結果と言えます。

もうひとつ、昔から変わらないモットーが「均質にする」こと。原料である魚は自然のものなので、毎回同じ質ではありません。色や形、大きさも変わっってくる。その都度現場で使い方を細かく決めて対応します。たとえば脂の乗り具合に合わせて鮮度が落ちないよう干し方を調整したり、夏場と冬場で干すタイミングを変えたりします。いずれも人の感覚で決める大切な部分です。工場では選別から箱詰めまで、多くの人が関わります。商品が多いぶん味付けもさまざまで、機械より人の手でやる方が効率がいい。魚をおろすのも人の手の方が歩留まりがいいんです。

今の目標は、年中食べてもらえる商材をふやすこと。

数の子と身欠ニシンは正月商材です。それをどうやって平月にも食べてもらうかが長年の課題なのですが、いまだ解決策は見つかっていません。甘露煮などの加工品で手に取りやすいものは既にあるので、日常の食卓に上る新しい商材をふやしていきたいと考えています。僕は前職が水産会社で、輸入ものの魚、ギンダラなどの漬け魚を扱っていました。これは確実に需要があるし、将来はこうした魚種にも挑戦したい。魚が好きなんですよ。食べるのも好きですし、売るのも面白いです。

やりがいを一緒に感じ合える仲間がほしい。

自分たちがつくっているものが店舗に並び、お客様に食べられていることを身近に感じられるのは、とても大きなやりがいです。売ってるだけ、扱ってるだけではわからない、漁師と直接話し、漁を間近に見て、獲れたものを加工する工程を知っているからこその喜びです。この喜びを、これから社会に出て自分を試したいと考えている若い人たちと分かち合いたいというのが、今の夢ですね。素直な人、聞く力を持っている人は伸びます。外から入ってくるものを柔軟に受け止め、2、3歩先を見て動ける人は必ず自分の能力を発揮できる。水産以外の学部でもまったく問題ありません。資格は入社してから取得すればいい。興味が湧くこと、それが道を切り拓く始まりです。